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2010/08/19

天皇の戦争責任 海外の主張

 日本の降伏が近づくと、天皇の戦争責任や処罰に関して、アメリカ国内はもちろん、関係諸国からも様々な声があがったようである。ここに、当時の「太平洋問題調査会」(IPR)会議での関係国代表者の発言部分や中華民国「世界日報」紙の報道の一部、アメリカ「ギャラップ社」の世論調査、リチャード・ラッセル上院議員の上院軍事委員会提出決議案、「全米弁護士協会」の主張などの一部を「天皇と戦 争責任」児島襄(文藝春秋 文春文庫)から抜粋する。

 下記に抜粋したような考え方が主流であったにもかかわらず、グルー次官の「日本人を無条件降伏させるには、天皇が必要である。日本人、そして恐らくは日本軍が喜んで従う唯一の声は、天皇の声である。いいかえれば、天皇は数万の米国人の生命を救う源泉である」という主張や連合国軍最高司令官総司令部政治顧問G・アチソンの「…私は(そして連合国の数カ国も強調しているが)天皇は戦争犯罪人だと思う。日本人の中にも、天皇が戦争を中止させた権力(パワー)を持っているのであれば、開戦を防止する権威(オーソリティ)を持っていたと述べる者がいる。そして、私は、日本が真に民主的になるためには天皇制は消滅しなければならない、という意見を、変えていない。しかし、現時点では、多くの情況が第2番目のより消極策を最善としている。すでに、われわれの軍隊の急速な復員はわれわれにハンディキャップを与えている。このような事情の下で、われわれが日本政府を利用して日本改革をつづけねばならぬとすれば、天皇が最も役立つ存在であることは疑いもない。…」、さらには、マッカーサーの「天皇は全日本国民の統合の象徴である。天皇を破滅させれば、(日本)国家が崩壊するであろう……私は、近代的民主主義体制を(日本に)注入する望みは、すべて失われることを確信する……(混乱を鎮めるためには)最低百万人の兵力を必要とし、しかも予測できぬ長年月の駐留が必要となろう……」というような「天皇利用論」がアメリカの方針となり、その後の連合国軍最高司令官総司令部による占領政策が進められることになったのである。そして、それが日本の戦後を方向づけたといえるであろう。 
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               第一部 天皇と戦争責任

 2

 ──ところで、
 グルー次官を中核にして米政府、軍当局が、日本にたいする勝利政策と戦後政策の焦点として天皇と天皇制に視線を集中しはじめたとき、ほかにもこの問題に関心をそそぐグループがいた。
 とくに目立ったのは、1945年1月25日、ホットスプリングスで開かれた「太平洋問題調査会」(IPR)会議である。
 この会議では、日本を中心にして戦後のアジアの政治、経済問題が討議されたが、米、英、カナダ、オーストラリア、フランス、インド、タイ、フィリピン、朝鮮の代表が参加した。
 タイ、フィリピン、朝鮮は、日本占領下または支配下にあるので民間人代表だけであるが、他の各国は政府関係者をふくめていた。
 中心議題である日本については、なお日本は抗戦能力を維持していると判定するとともに、戦後処理として、敗北後のナチス・ドイツと同等の処遇、戦争犯罪人の処罰、憲法の改正などが提案された。
 ただ各国代表の間では、たとえば英国代表は、新しい平和路線を保持することを条件にして皇室、財閥の存続を認めたのにたいして、米国代表は現在の支配階級の一掃を主張し、インド代表は、米英両国が勝利に乗じて日本およびアジアを「日露戦争以前」の「未開状態」にひきもどさぬよう求め、微妙な意見の相違が記録されている。
 天皇および天皇制については、英国代表は「日本に任せる」、米国と中華民国代表は「天皇制排除」、一部の代表は、「利用したあとに捨てる」という見解を表明した。
 とりわけ明確な意見は、次のようなものであった。


▽オーウェン・ラティモア(米国、元蒋介石顧問、米戦争情報局極東部長)
「どのような事情下でも天皇を利用すべきではない。そうすれば、われわれが天皇の権力を認めることになる。天皇および皇室典範で規定された後継者を中国または別の場所に移し、皇室財産は没収して公共の利用に提供すべきである」

▽胡適(中華民国 元駐米大使)
「中国人の多くは天皇制廃止に賛成である。個人的見解だが、私は、天皇はロンドンに転居すればよいと思う。そこには別の名目的な主君(英国王)もいて、住み心地が良いはずだ。この考えは日本人にもいけいれられると思う」

▽ハーバート・ノーマン(カナダ、『日本における近代国家の成立』その他の著書で知られる。カナダ外務省極東部員)
「占領軍は天皇をひそかに葉山に移し、摂政または摂政委員会を設けたら良い。摂政には過去の侵略政策に無関係な有名人が必要だ」


▽邵毓麟(しょういくりん)(中華民国、国民党軍事委員会秘書)
「日本人自身に天皇制を放棄させるべきだ。いますぐに天皇の信頼を失わせるように宣伝を開始し、われわれが東京に入ったときに、日本国民が天皇制を廃棄しやすいようにすべきだ」

▽サー・ジョージ・サンソム
(英国、駐米大使館極東問題顧問)
「どうも天皇問題が誇大視されている。退位させて摂政を置くのが最善かどうかはわからない。われわれとしては、自然に天皇制が衰退する政策をとるべきだし、そうなると思う」

 以上の意見は、当時の連合国の識者の平均的な発想といえる。そして、これらの天皇にたいする所見は、米国務省の考え方にも影響を与えることになる。

 ・・・(以下略
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4 

 この時期に、天皇問題に関心を示していたのは、中華民国であった。
 ドイツが降伏する前日、5月6日、重慶の「世界日報」紙は、天皇を「日本人戦争犯罪人第1号」と呼び、激しい語調で主張した。
「中華民国はヒロヒトを許すことはできない。彼は裁かれ、処刑され、その死体は南京の中山路に曝(さら)されるべきだ」
 つづいて、5月11日、外交部長宋子文(そうしぶん)は、サンフランシスコで、中華民国は天皇をどうするつもりか、と記者団に質問されて、応えた。
「その問題は、われわれが彼に近づく前に、片づいていると思う」

 ・・・(以下略)
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 米国の世論調査社「ギャラップ」は、6月はじめ、ひそかに天皇にかんする世論調査をこころみた。「戦争のあと日本の天皇をどう処置すべきか」というテーマであり、設問にたいする回答は次のようなものであった。


 ▽殺せ。拷問し餓死させよ     36%
 ▽処罰または流刑にせよ      24%
 ▽裁判にかけ有罪なら処罰せよ   10%
 ▽戦争犯罪人として扱え       7%
 ▽なにもするな           4%
 ▽傀儡として利用せよ        3%
 ▽その他              4%
 ▽わからない           12%


 米国民の77%が天皇の処罰を要求していることになる。
 この「ギャラップ」調査は、公表されなかったが、政府には報告された。
 6月18日、「ホワイト・ハウス」で軍関係首脳会議がひらかれた。
 7月15日にポツダムで開催が予定されている米英ソ首脳会議にそなえて、米国の対日作戦のメドを確定するためである。
 これまでに日本を屈服させる方策については、海軍は「空襲と海上封鎖」で降伏させ得ると述べ、陸軍は「日本本土上陸」以外あり得ないと主張している。」そして、国務省はグルー次官が提言したように、「政治的手段」で降伏をうながし得る、と考えていた。
 会議では、参謀総長マーシャル元帥が、一刻も早く日本本土に上陸するのが、米国民の生命を救い日本を降伏させる早道だ、と強調した。
 「日本人は最後まで戦う。だから、戦争を早くやめさせるには、早く最後まで戦わせるほうがよい」
「味方も損害をうける。しかし、血を流さず戦争に勝つことはできない。これは憂鬱な事実だ」
 マーシャル参謀総長の発言にたいして、陸軍長官スチムソンは、日本の「潜在的平和勢力」による降伏は考えられないか、といい、大統領顧問W・リーヒ海軍大将も、指摘した。
「なにも日本を無条件降伏させなければ、こちらが敗けるわけではない。無条件降伏以外の降伏でもいいではないか。無条件降伏に固執して日本人を自棄的心境においこみ、われわれの戦死者名簿を厚くしては意味がない」
 だがほかに適切な対案もなく、陸軍の日本本土上陸作戦が承認されて、会談は終った。 
 この会議の5日後6月21日、沖縄は陥落した。
 そして、この沖縄陥落は、米国の対日政策、とくに天皇と天皇制にたいする姿勢を転換させるきっかけになった。

 ・・・(以下略)
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13  

 ・・・
 外部でも、天皇を戦争犯罪人に指定せよという動きが激化していたが、9月18日上院議員リチャード・ラッセル(ジョージア州 民主党)は、上院軍事委員会に決議案を提出した。
「米合衆国(第79)議会は、ここに米国政府の政策として、日本天皇ヒロヒトを戦争犯罪人として裁くことを宣言する……」
 ラッセル議員は、この決議案を上下両院合同決議にすることを要求して、声高らかに2回朗読した。そして、提案理由を陳述した。
「ドイツにたいして振りあげられた”鉄の手”が、日本にたいしては”皮手袋”になるのは、どうしてか。
 ヒロヒト天皇は日本軍国主義の頭であり、心臓である。彼は史上最大の侵略者の一人である。ヒロヒト天皇は、戦争終結のメッセージ(詔書)の中で、一言も降伏または敗北という言葉を使っていない。日本国民は、おかげで、天皇は連合国のために戦争をやめてやったのだとの印象をうけている。
 天皇を裁判にかけることは、天皇がまとっている神格性のベールをはぎとり、日本国民の眼を開かせるとともに、日本国民自身に敗北を認識させるのに役立つはずである」
 ラッセル議員の熱弁は、拍手と歓呼の声を招来した。が、決議案は反対多数で否決された。
 
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21

 ・・・
 「SWNCC/3」を承知しての発言であるが、カーペンター大佐がいう米国の新聞は、当時は連日のように天皇を戦争犯罪人として裁けという声を、伝えていた。
 たとえば、その代表例としては、「全米弁護士協会」の動議が注目をあつめていた。
 同協会は、トルーマン大統領に書簡を送り、米英ソ中華民国の代表を集めて速やかに日本人戦争犯罪人を裁く国際軍事法廷を開設せよ、と建議したが、天皇も裁け、と主張した。
 「天皇は戦争を計画し遂行した第一の責任者であり、降伏を申し入れた当事者である。ナチス・ドイツの降伏を申し入れた海軍大将カール・デーニッツは、戦争犯罪人として裁判を待っている。天皇も戦争犯人に指定されるべきである」
 この「全米弁護士協会」の主張は、予想以上に支持を集め、あらためて「SWNCC」メンバーをふくむ米政府内にも、天皇戦犯論が強調された。

 ・・・(以下略)


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